調査・研究
2023.12.10
展示水槽内のソウギョに対するコイの掃除行動の観察例が論文掲載
相模川ふれあい科学館で、コイの興味深い行動が観察されました。流れのアクアリウムの下流域にいるコイの幼魚が、同居する大きなソウギョに近づいて、体の表面を複数回にわたりついばみ、なめるような行動です。撮影された写真と動画をもとに、コイの生態に関するこれまでの研究報告を調べたところ、コイによる掃除行動の例はすでに知られていたものの、他の魚に対する掃除行動の例はないことが分かりました。非常に珍しい行動であると考え、公益財団法人平岡環境科学研究所が刊行する「自然環境科学研究」誌に投稿したところ、その新規性が認められ、このたび公開されましたのでお知らせします。
掲載誌 自然環境科学研究 Vol.36 2023年12月発行
題名 大型水槽下で初確認されたコイCyprinus carpioによるソウギョCtenopharyngodon idellusへの掃除行動
著者 中市創太朗(北里大学海洋生命科学部・相模川ふれあい科学館)、伊藤寿茂(相模川ふれあい科学館)
コイの掃除行動に最初に気づいた中市創太朗さんは、当館の学生アルバイトスタッフです。当時、インターンシップとして展示飼育の仕事を体験中のことでした。掃除行動については、ホンソメワケベラやオトヒメエビなど、海にすむ生き物の例がよく知られますが、淡水魚同士で成立した例は世界的に見てもたいへん少なく、貴重な観察事例と言えます。飼育下の動物が今まで知られていない姿を見せてくれることがあると教えられます。今後も多くの生き物たちを展示飼育しながら、彼らの秘めた不思議な行動についても注目していきたいと考えています。
※参考 流れのアクアリウム下流域
伊藤