飼育日誌

お知らせ 2024.11.18

スタンバイOKのカエルたち

皆さまこんにちは。
当館の人気展示の一つに「両生類水槽」があります。
カエルやイモリの仲間を展示していますが、スペースなどの関係もあって、現在展示できていない種類もたくさんいます。
週に数回あるエサやり業務は、私にとって憩いの時間で、飼育員の役得です。
ということで今回は、当館のバックヤードでスタンバっているカエルたちについて語ってみます。


ニホンアマガエル

日本のカエルと言えばコレ!というポピュラーなカエルです。
ここ水郷田名地域では、今も非常に数が多く、田んぼに水が入る時期の夜や雨の日は、本種の大合唱が響き渡っています。
鳴き声はクワクワ…(グワグワ…)と聞こえます。
オタマジャクシの期間は1カ月足らずと短く、みるみるカエルに成長するのですが、繁殖期は長期間にわたり、5月頃から地域によっては9月の初め頃まで見られたりします。
この地域の田んぼでは、7月頃に「中干し」で一度水がなくなりますが、その後もまたオタマジャクシが見られるようになることから、8月になっても産卵していることが分かります。


シュレーゲルアオガエル

ニホンアマガエルによく似ていますが、口がよりとがっていて、目の前後に茶色いラインがない点で見分けられます。
また、メスは育つと5cm以上になり、その大きさにぎょっとさせられることもあります。
鳴き声はクココココ…、キカカカカ…、と聞こえます(昭和の某3つ首怪獣のようだと思っています)。
田植え前の湿った土の中や土手のえぐれの下で産卵します。
卵はメレンゲのような泡に包まれており、田んぼに水が入ると泡がばらけてオタマジャクシが泳ぎ出していきます。田んぼに水が入らなかったらどうするつもりなのか?本当に不思議な生態です。


ヤマアカガエル(足の下にもう一匹ギョロリ…)

地味な色合いは落ち葉や枯れ枝にまぎれるための擬態だと思われます。
メリハリのある体型と強いジャンプ力を持つ、陰陽併せ持つキャラクターが魅力です。
この仲間の多くは寒さにとても強く、極寒の2月頃に、田んぼや池などで産卵します。
真冬でもその気になれば動くことができ、完全に冬眠せずに水底にたたずんでいるものを見たこともあります。
鳴き声はパロロロ…、キュラララ…と聞こえますが、野外で聞いたことはほとんどありません。
私が子供の頃は、田んぼのあぜや、そのまわりの畑や庭先にも、本種や近縁のニホンアカガエルの大きな個体がいて、ボンボン飛び跳ねていたものですが、最近はかなり少なくなった印象です。


カジカガエル(私の膝の上にて)

アオガエルの仲間ですが、体は灰色のまだら模様です。
指に吸盤を持っていますが、木の上にはあまり登らず、河原の石の上にたたずんでいることが多いです。
鳴き声がとても美しいことで知られ、フィフィフィフィ…と聞こえます。
初夏に相模川の中流域や支流へ行くと、浅瀬で本種のオタマジャクシが見つかります。他のカエルのオタマジャクシだと流されてしまうようなところでも、吸盤状の口とお腹で石にくっつくことが出来るのです。


ヌマガエル

ずんぐりした体型が可愛らしいカエルです。
暑さや乾き、塩分にも強く、吸盤がないのに登る能力が高いなど、ユニークな特徴を持つ注目すべきカエルです。特に塩分耐性はなかなかのもので、川から海へ流されたらしきものが、そのまま海辺にすみ着いている現場を何度も見ています。
神奈川県ではほぼ確実に外来種です(本来の分布域は西日本です)。
相模川でも昨年ついに見つけてしまったお話は、以前もさせて頂きました。
竹本飼育員が詳しく論文にまとめてくれていますので、よろしければ読んでみて下さい(ネット上で無料で読めます)。
飼育日誌2023.07.30 相模川流域における国内外来種ヌマガエルの初記録が論文掲載

ここまで書いてみて「こんなにいたんだ」と改めて思いますね。
こんなに個性的な面々を、私たち飼育員だけが楽しんでいるのは実にもったいない!
…ということで、今週からどんどんと展示していきます!
スタートバッターはカジカガエル。
両生類水槽に登場です。
他の種類も、近いうちに展示します。
今週末あたりかな~と思いますので、次の土日はカエルを見に、是非当館へお越し下さい。
(登場しないカエルもいますので悪しからず…)。

伊藤


2024年11月
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  • 休館日
  • 祝日・振替休日
  • 9:30~17:00
  • 9:30~18:30
  • 9:30~16:30