飼育日誌
よじ登れ!ヌマガエル
皆さまこんにちは。
いよいよ夏休みに突入です。
皆さまをお迎えすべく、特別企画展示に続きまして常設展示の方もいくつか新しくしています。
人ゾーンの「田んぼの生き物水槽」では、ホトケドジョウに代わってヌマガエルが登場です。
これまでに、実習生による水槽展示(現・トピック水槽)、川の多様な生き物水槽、水辺の生き物水槽、ミニ企画展示と、期間限定で展示を渡り歩いてきました。
西日本に行くと、田んぼでよく見られるなじみ深いカエルです。
東日本には元々いなかったのですが、最近は見られる場所がふえており、国内外来種となっています。
相模川流域でもつい昨年に、当館の調査で見つけてしまっています。
発見者の一人である竹本飼育員がすばやく論文にして公開してくれています。
調査・研究 2023/7/30 相模川流域における国内外来種ヌマガエルの初記録が論文掲載
移動した先で生き延び、子孫を残して、分布を拡大するのは、ふつうは並大抵のことではありません。
外来種となるような生き物は、もともとそこにいる在来種に負けない「特技」を持っているものが多いです。
ヌマガエルは、乾きや、塩分、暑さに強く、登るのが得意、といった数々の特技を持っています。
今回の展示では、その中から2つの紹介を試みています。
1つ目は暑さ(熱さ)に耐える能力です。
展示の解説文で、そのあたりを分かりやすく書いてみました。
特にオタマジャクシ時代がとびぬけており、43℃の水中で生き延びていた例があるほどです。
43℃といえば、風呂好きの私でもちょっときつい、アツアツのお湯加減です。
彼らが熱さを好んでいるのか、しぶしぶ耐えているのかは、判断が難しいところです。
どちらにしても、外敵が少ない高水温の中で、成長速度を上げて一気にカエルになるためには、適応的だと言えます。
ちなみに、展示では25℃前後の快適な温度で過ごしてもらっていますので、ご心配なく。
さて、2つ目は登る能力、です。
登るのが得意とされるアマガエルやアオガエルの仲間は、足の指先に吸盤があり、木に登ったり、ガラスに張り付いたりできます。
しかし、ヌマガエルの指先には吸盤がありません。にもかかわらず、急こう配のガケや、切り立ったコンクリートの壁を登れると言うのです。
須磨海浜水族園の研究では、傾斜65°、高さ70cmのコンクリートの壁を、ポンポンといともたやすく登って逃げたことが報告されています。
私は登っているところを見たことはないのですが、水辺から遠く離れた江の島の頂上付近(標高50mほど)で本種を見つけたことがあります。
今回の展示では、登るのにちょっと頑張らなくてはいけない、アスレチック的なレイアウトをしてみました。
アップアップしていたら、すぐに登りやすくしてあげるつもりで見ていましたが、全く心配いりませんでした。このとおりです。
細い枝を足掛かりに、いともたやすく登っていくではありませんか。
樹上にいると、ヌマガエルのイメージが変わります。
さらに!
これにはびっくりしました。
吸盤がないのに、体のペトペトと、驚くべきバランス感覚で登っているみたいです。
普段、地面や水辺でのんびりしている姿からは想像できません。
面白いです。しっかりと蓋をしていないと、逃げられてしまいそうです。
館の真ん中やや右寄りにある、小さな水槽にいますので、お越しの際は是非ご覧ください。
伊藤