飼育日誌
貝の赤ちゃん⑧
皆さまこんにちは。
不定期連載、またもやだいぶ間があいてしまいました。
3カ月ぶりですが、しれっと前回の続きです。
“ドブガイ”の赤ちゃんを色々な魚に寄生させて、さあどうなったか。
もったいぶらずに言えば、いくつかの魚への寄生に、無事成功していました!
ところで「寄生に成功」ってどういうことでしょう?
ズバリ「稚貝に変態するまで寄生していられた」ということです。
順を追って説明します。
前回、貝の赤ちゃんは「自分の殻に触れたものを反射的にクリップして寄生する」と書きました。
言い換えますと、この時点でまだ、寄生する相手を選んでいないということ。
触るものには誰かれ構わずクリップ!魚でなくてもクリップ!します。
例えば、細い筆でツンツンすれば、筆先の毛にすら、ぶら下がってきます。
問題はこの後です。
そのまま相手に寄生し続けられるかが、問題です。
相性の悪いものに寄生した場合、赤ちゃんたちは数日以内にほとんどが力尽きて落ちてしまいます。
相性の良い魚に寄生して、振り落とされることなく、何とか1日頑張れた赤ちゃんは、こんな感じになっています。
分かりますか?魚のヒレの中に赤ちゃんが埋まっているのです。
これ、赤ちゃんが自力で潜り込んだわけではありません。
魚の方が、赤ちゃんにつけられたキズを治す際に、赤ちゃんごと包み込んでしまった状態になります。
この状態を被嚢(ひのう)と言います。
寄生された魚は、赤ちゃんを振り落とすどころか、自分の体に取り込んで落ちにくくしてしまったわけです。
被嚢した赤ちゃんは、振り落とされる心配も減り、魚の組織から栄養をもらって育っていきます。
その育ち方も一風変わっています。
“ドブガイ”をはじめとした日本産イシガイ類の多くは、体のサイズはほぼ変わらないまま、体の中身だけを劇的に変化させていきます。
筋肉ができ、内臓ができ、足ができ、という具合です。
水温25℃なら1週間もすれば、すっかり「稚貝」に変態完了します。
ここで稚貝は、あろうことか魚の体を突き破って、水底に落ちていきます。
「恩をあだで返す」ってやつですね?
“魚から離れた赤ちゃん”こと「稚貝」は、出来立てほやほやの足を伸び縮みさせて、居心地の良い場所へと移動していきます。
さあ、このあとどうなるのでしょうか。
気になります…よね…?
続きはまた今度に致します。
伊藤