飼育日誌
水槽にほれる
皆さまこんにちは。
水族館の飼育員になって20年。
自分でも「他の飼育員とちょっと違うかな」と思うところがあります。
それは、生き物だけでなく、モノである「展示水槽」に思い入れてしまうところです。
特に主担当した展示水槽や企画展に対しては、自分の家族や仲間に対するような気持ちが芽生えます。
先日より、入口のアユ水槽がメンテナンスに入りました。
老朽化した水槽部分が撤去され、城址のごとく台座だけが残っています。
安全にメンテナンスにうつることが出来たのがせめてもの救いでした。
この1年、当展示の主担当を務めてきました。
光のよく当たるこの水槽、みるみるコケで汚れてくるので掃除が欠かせませんでした。
腰痛持ちの自分でも隅々まで掃除できるよう、掃除道具の柄を歯ブラシのように曲げたり、しならない素材に変えたりして、きれいに維持してきました。
アユを大きく育てようと餌もこまめに与えてきました。そのぶん底砂利や濾過槽の掃除が欠かせませんでした。
手がかかった分、寂しさもひとしおです。
まずはゆっくり休んでと欲しいと思っています。
ところでアユです。
当館のシンボルフィッシュですから、すぐに展示を再開したいと思いました。
現在は館内最奥の真ん中にあります「流れのアクアリウム中流域」でご覧頂けます。
流れのアクアリウム中流域
本来、この時期のアユは自然下ではまだ海にいて、これから川を遡ってくるのです。
展示の個体は、アユの繁殖を手掛ける機関で、早めに育てられた「相模湾産の遺伝子を持つアユ」になります。
アユは、他の魚種と一緒に飼育すると、時にウロコをむしって食べるクセが出ることがあります。
スケールイーター的なこの性質は、アユの生態を考えるうえで興味深いものではあるのですが、展示においてはやっかいです。
導入時は慎重に見極めて、同居のオイカワやアブラハヤがボロボロにされないか注意しなくてはならないのですが、今のところは大丈夫そうです。
近くの水槽には、季節に合わせて桜のレイアウトもあしらっております。
桜を横目に、広々としたスペースを悠々と泳ぐアユたちを是非お楽しみ下さい。
伊藤