飼育日誌

お知らせ 2024.05.31

検証!相模川で潮干狩り①

皆さまこんにちは。
先日、一足先にマンスリー水槽を6月仕様に更新しました。
6月と言えば梅雨、雨で外に出られない日が多くなります。
しかし、晴れさえすれば、実は海で遊ぶのに向く時期でもあります。
その一番の理由として「昼に潮が引く日が多い」ことが挙げられます。
私たちのすむ地球では、日に2回、海面の高さが上下します。
海面が下がっている時間帯を干潮時と言います。
6月は、昼間に干潮時が重なる日が多く、生き物を探しやすいというわけです。
加えて、まだ夏が本格化していなくて涼しい日が多いのもあります。


6月のマンスリー水槽

ということで、今回のマンスリー水槽は「潮干狩り」をテーマにしてみました。
解説にも書いていますが、県内で一番のおすすめスポットは三浦半島の干潟です。
私自身、若い頃から何度も行っております。
多くの方々にとって、一番の目的となるのはアサリでしょう。
年によって多い少ないはあるようですが、県内有数の生息地であることは間違いありません。

それでは、我らが相模川はどうなのでしょうか。
今回はあえて、相模川に潮干狩りへ行ってみました。


相模川河口域

初っ端からネガティブで恐縮ですが、相模川の河口域は「失われた干潟」の代名詞と図鑑に書かれてしまうほど、残念なイメージがついています。
私が生まれた頃、1970年代までは、広大な泥干潟に無数の生き物がひしめく楽園だったと言います。
ただ、当時の相模川における生き物の情報が、調べてもあまり出てきません(私が探し出せてないだけで、実はあるのかもしれませんが…)。
その後、干潟は砂地化して縮小し、生き物の数もぱっと見でもガクンと減ったと言います。
これは、おそらく正しいのでしょう。
ただ、ちゃんと調べてみたら意外な生き物がいるとか、面白いことが分かるかも知れません。
私たちは、河口域が今の姿になってから、特にカニについて調べてきました。
それらの成果は論文にしてありますし、一昨年の特別企画展「相模のカニ展」でも、がっつり紹介させて頂いたところです。


ハマガニの巣穴

と、いうことで探索スタートです。
水辺に向かう途中、半乾きの地面にぼこぼこと穴が開いています。ハマガニの巣穴です。
相模川のユニークさの一つとして、ハマガニの多さが挙げられます。
今年もすごいことになっていました。関東どころか、本州全体でもここまでハマガニが良好に生息している場所はあまりないのではないでしょうか。
今時期は丁度ハマガニの繁殖期でもあります。
彼らは夜行性なので昼に来るとこんな感じですが、夜になれば、そこらじゅうを歩き回っていることでしょう。
今回のマンスリー水槽で、その雄姿をご覧いただけるようにしました。


アシハラガニ

少し小さなアシハラガニもちらほら見つかりました。
他の干潟ではこちらが目立ちまくっていることが多いのですが、相模川ではわき役ポジションです。
青みのある水彩画テイストな色合いに癒されます。こちらも展示しましたので是非ご覧ください。


アカテガニの脱皮殻がたくさん

こんなのも。ほぼ全てアカテガニのものでした。
「みんなでやわらかくなれば怖くない」的なノリで、脱ぎに来たのでしょうか。
想像が膨らみます。
おっと…このままではいつものカニ三昧になってしまいます。
今回は潮干狩り、貝を探さなくては!


オゴノリらしき海藻

ある程度想像していましたが、砂を掘っても、生きている貝は全然出てきません。
貝殻はちらほら見つかるのですが…。
海藻が生えていると言うことは、定期的に塩水が差し込んでいるはずで、底質だってそれほど悪くないのではと思えます。なぜ見つからないのでしょう。


マガキ

唯一見つけることが出来たのがこちら、みんな大好きオイスターです。
これもかなり少なかったです。
近隣の境川へ行けば、河口域の護岸にびっしりなので、対照的だと言えます。
環境が改変されて、干潟の泥を失ったという点では、境川も似たようなものなのですが。
近くにある2つの川で、一体何が違うのか、調べてみる価値がありそうです。
ということで、今回アサリは採れずじまい。
では、アサリが全くいないのかというと、そうでもないのです。
これを見て下さい。


5年前に見つけた相模川産アサリ

2019年の5月に、相模川で撮影したアサリの写真です。
この時は「まぁいるよね」くらいに思い、ちゃんと標本を残しませんでした。失敗しました。
確か、砂から掘り出したのではなく、ものに付着していたはずです。
あまり知られていませんが、小さい頃のアサリは自分が出した糸で、岩やカキ殻などに付着生活をする場合があるのです。

さて、相模川の貝が少なくてしょんぼりしたところで、続きは次回に致します。

伊藤


2024年12月
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