飼育日誌

お知らせ 2024.04.30

すごくて、かわいい、ホトケドジョウ

皆さまこんにちは。
今年もゴールデンウィークがやってまいりました。
ホトケドジョウが久々の登場です。
場所は人ゾーンの「田んぼの生き物水槽」です。


お地蔵さんみたいにまん丸な頭


田んぼの生き物水槽

本種は、神奈川県ではあまり見られなくなっている希少な魚です。
生息環境が減っているのが主な理由とされますが、もう一つ本種には、明らかに他の魚とは違う「見つけにくさ」があると思っています。
それは…水が少ないところに多い(気がする)です。

魚について学んだ人からすると、ホトケドジョウがいるのは湧き水のある場所だと言うはずです。
これはその通りで、論文などのデータからも、湧き水に集まる性質が裏付けられています。

湧き水にもいろいろあります。
私たちに最もなじみ深い温泉も、湧き水の一つです(ホトケにはアツアツ過ぎますが…)。
その次にイメージされるのは、水底からどんどこ水が湧いているような池や湖でしょう。他の多くの生き物にとっても好まれる環境です。
ただホトケドジョウの場合、そういうところで他の生き物と一緒にくらすケースが多くないように思えるのです(いないわけではないのですが)。


某ホトケ生息地。水深は1cmあるかないか。魚はホトケのみ。


真冬の生息地。岸の近くは凍っている…

彼らがよく見られるのは、岸辺の崖からポタポタしたたる少ない湧き水から始まる極細の流れ、場合によっては湿り気があるだけの落ち葉だまりのような、はかなげな水辺です。
「こんな、いつ枯れるか分からない水たまりに魚なんているはずない」と思いながらも落ち葉をめくると、いた!なんてことが何度もあります。
当館の展示でいうと、ヒガシヒダサンショウウオやサワガニの展示水槽がイメージに近いです。

一昔前までは、こうした小さな湧き水と土地の高低差をうまく使った田んぼがたくさんつくられていました。
いわゆる谷津田です。
ここ水郷田名のまわりでは、もうほとんど見られなくなっています。
当館の「ふれあい田んぼ」は、不完全ながら、それを再現したものになっています。
この地域の方々は、道路わきの崖から常に水がしたたり落ちている様子を普段からご覧になっていると思います。こういう水が自然な水辺を作っていた時代には、ホトケドジョウがたくさんいたかも知れません。


別の生息地。今回の展示はこうした環境の再現です。

今回の展示は、私が一番にイメージするホトケドジョウの生息地よりは、ちょっと水を多くして、魚を探しやすくしてみました。
それでも隠れてしまっていることもありえます。ちょっと探して見えない時はすみません。どうかご了承下さい。

最後に飼育下でのトピックです。
今年はホトケドジョウの繁殖に力を入れています。
すでにバックヤードで産卵に成功し、赤ちゃんがすくすくと育っているところです。


ホトケドジョウの卵


2週間前に生まれた赤ちゃん

現在展示しているホトケドジョウたちは、バックヤードにいる赤ちゃんの親です。
先日、ホトケドジョウの繁殖を手掛けている仲間のところをたずねて教えてもらったのですが、上手に育てるには卵や赤ちゃんを取り出すのではなく「産んだかな」というタイミングで親の方を移動させるのが良い、とのことでした。
なるほど!ということで、さっそく参考にしています。
バックヤードで1回、そして今回の展示への移動を経て、現在バックヤードには2つの赤ちゃん水槽があります。
展示水槽でもさっそく、雄が雌をつつきまわす産卵前の行動が見られるので、期待大です。赤ちゃんが出てくるのを今か今かと期待しています。
皆さまと一緒に見守っていきたいと思っています。
もしかしたら、展示をご覧になる皆さまの方が、私たちより先に卵や赤ちゃんに気づくかも知れませんね。

伊藤


2024年6月
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