飼育日誌
大きなカエルの小さなオタマ
皆さまこんにちは。
4月1日から、人ゾーン「田んぼの生き物水槽」にオタマジャクシが登場です。
種類はアズマヒキガエル。
当館の「両生類水槽」のレギュラーにして、世界でも10本の指に入る巨大さが魅力ですが、オタマの時代はとてもかわいいのです。
オタマジャクシなのに種類までわかるの?と思われた方もおられるかと思います。
確かに、日本産のカエルのオタマはどれもよく似ています。特にアカガエルの仲間は、見分けるのが難しいです。
でも今回は、種類を間違えていることはありません。
なぜなら、当館のまわりの人工池で見つけた卵からふ化させたものだからです。
卵を見つけたのは3月に開催した館外イベント「たなさんぽ」。
ルート上の池で卵を発見したので参加者にお見せしました。
その後で、持ち帰ることにしたのです。
といいますのも、この池は水が結構流れているため、放っておくと泳ぐ力の弱いオタマが流されてしまうのです。
流された先で育つことはなさそうだと思い、それならば育てて、皆さまにお見せしようと思いました。
ヒキガエルの卵はロープ状になったゼリー質に包まれています。
ヒキガエル特有のかたちであり、卵であってもヒキガエルだ!と分かるのです。
当館に赴任してまる2年。職場のまわりで見たのは久々で新鮮です。
生まれて数日目。頭の後ろにウーパールーパーのようなフサフサ(外鰓)が見えます。
というわけで、正真正銘、水郷田名生まれのオタマです。
本種がオタマでいる期間は割と短いです。すでにふ化後3週間経ってますので、あと1ヶ月以内に展示が終わる可能性が高いです。
ゴールデンウィークでは、たぶんもう見られません。
見たい方はお早めにどうぞ。
…ところで、私はずっと神奈川県の南側にすんでいまして、子供の頃はまわりでよくヒキガエルを見かけたものです。近所の神社の池で毎年のように卵やオタマを採集して飼っていました。高校生になるころまでは、雨の夜に道路を歩くカエルを見つけて、車にひかれるなよ!と草むらによけてあげた記憶がありますが、その後は全く見かけなくなりました。卵を産む場所もなくなり、長生きした老ガエルたちもついにいなくなってしまったのでしょう。さびしいものです。
ここ水郷田名では、県の南側で失われたカエルの生息環境が30年以上にわたり、人里に維持されていることになります。地元の方はご存じでしょうが、道路の車の交通量は少なくありません(朝はガチガチの渋滞…!県南を越えると思います…)。家も増えて、水辺も減ってきてはいますが、それでもまだ、カエルがすめています。水郷田名のような場所は、人と生き物が共存できる地域の良い例として、参考となるのではと考えたりします。
伊藤