飼育日誌

2023.10.23

相模の海の生き物展③ ロウニンアジ

皆さまこんにちは。
相模の海の生き物展、お楽しみ頂けていますでしょうか。
前回の日誌で、実は海の展示と言いつつも、川との関係も意識していることをお伝えしました。

それに関連した魚として、今回はロウニンアジをご紹介します。


ロウニンアジの幼魚

相模川にすむ魚のなかで、一番大きくなる種類は何なのか、考えたことはありますか?
「その魚が最大サイズまで成長した場合」という条件をつければ、本種がその有力候補になります。

相模川どころか、相模湾らしくもない南国感あふれる魚ですが、確かに相模川で見つかっています。
相模川で見られるものは小さな幼魚ですが、最大級まで成長したものは、全長1.3m、体重30kgをゆうに超えます。

さて、そんなロウニンアジですが、今回の特別企画展の数ヶ月前に、ひっそりと当館にお目見えしています。
江の島の漁師さんから新江ノ島水族館を経て当館へ運ばれ、「流れのアクアリウム」一番左の河口に仲間入りしました。


流れのアクアリウム河口域
丸で囲った部分にロウニンアジが…。

まだまだ小さいです。
実際に相模川で見られるものはこのサイズばかりで、河口でルアー釣りをしているとたまに釣れるそうです。
河口の水槽には大きなドチザメや、貪欲なハンターであるスズキがいますので、入れたとたんにいじめられたらどうしようという心配もありましたが、どうやら大丈夫そうです。
せっかく展示になじんでいますし、特別展だからとあえて小さい水槽へ移動するのもナンだな、と思っていたところ、過去に実施したアマゾンの特別企画展で、アマゾン淡水エイをブース外の「水上散歩水槽」で展示したことがあるとのこと。
ならば、ということでロウニンアジの展示場所はあえて移動させず、ブース内にはイラストと解説のみとし、流れのアクアリウム河口域へと誘導するかたちにしてみました。
イラストはほぼ原寸大の成魚です。メンテナンスの出入り口のスペースを有効活用、ということで、プロのデザイナーさんがカッコよく設えて下さいました。


特別企画展会場内のロウニンアジ解説ブース

ロウニンアジとは、私が大学生の頃からの付き合いです。
その頃は南の島へよく釣りに行っていました。同行者の中に、ロウニンアジの巨大サイズを釣ることに全てをかけている釣り師がいました。アルバイト代をはたいて、ものすごく頑丈な釣りザオにPEラインという特殊な糸、そして10㎝ほどもある大きなルアーを用意していました。私は小さい魚を釣るための仕掛けも持っていったのですが、彼はそんなものは持っていません。ロウニンアジなどの巨大魚一点集中の潔さでした。

大人のロウニンアジは時速40km以上で泳ぎながら、目で獲物を見つけて追いかけます。釣り師いわく、サケマスを釣るときのようにふらふらとルアーを動かして誘っても、ニセモノだとばれてしまうそうです。そこで、水面で水しぶきと音を立てることに特化した「ポッパー」というルアーを「遠くへ投げて全力で巻き取る」ことを繰り返していました。数時間続けると、筋トレした腕がパンパンになると言っていました。結局、私が同行した時に巨大ロウニンアジは釣れなかったのですが、後日「釣れた!」と写真を見せてくれました。彼の釣りへの情熱に脱帽しました。

…ということで、私にとってのロウニンアジは相模川屈指の巨大魚であると同時に、思い出補正がっつりの愛着ある存在でもあるのです。実は展示飼育するのは初めてではなく、以前に勤めていた水族館でも育てていたことがあります。ヒラアジ類の中では用心深く、成長もゆっくりだったことを覚えています。

何とか元気に育ってくれるよう、頑張りたいです。

伊藤


2024年4月
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