飼育日誌

2023.05.16

淡水二枚貝にさわってみよう

皆さまこんにちは。
久々のイシガイ類のお話です。今回は赤ちゃんを産み出す「親貝」について書いてみます。

10年以上前に採集した相模川産タテボシガイ(イシガイ)
(当館元所長、高橋由紀男さんに情報提供頂きました)

赤ちゃんを出し終わった親貝は、タナゴの水槽に入れたり、遺伝子を調べるために知人の研究者に送ったりします。長期飼育にも挑戦しています。

そして、あれこれとほどこした最後に残るのが貝殻です。
貝のお味噌汁を食べた後にも、アサリやシジミの貝殻が残りますよね。
貝が生きて育った証拠とも言えます。
川や水路でも、貝殻だけになってから数カ月から1年以上も残ります。貝の生息を調べる時には、まず岸辺を歩きながら貝殻を探すのが効率的だったりします。


相模川産“ドブガイ”の貝殻(正確な種類は不明)
(当館元所長、竹嶋徹夫さんにご提供頂きました)

貝殻をさわってみますと、ただ固いだけではなく皮(殻皮)の独特なごわごわ感、種類によって特有のでこぼこや、年齢を反映したすじ(成長線)が感じられ、繊細ながら独特の感触があります。
そして、気のせいかも知れませんが、固さの中に確かに感じる、ごくわずかな弾力。
慣れてくると、水中をまさぐりながら手触りで石と区別できたりします。

このさわった時の「あれ、石となんか違うぞ」の感じ、皆さまにも体験してもらいたいと思い立ちました。
そういえば、自宅やバックヤードに過去に集めた貝殻があったはず!
これらを、どうせなら限りなく本物をさわっている感じにしたいと思い、中に「身の代わり」となる同じ重さの素材を入れて、左右の貝殻が閉じた状態に再現してみました。

これを、先日再開したばかりのタッチング水槽に入れました。もともと生きた貝だけを入れていたのです。これだと皆さまのタッチがアグレッシブ過ぎる場合に貝が疲れてしまうかなと思い、その対策も兼ねて、今は「本物」と「本物そっくり」が両方入っているかたちです。さわり心地から重さまで、カンペキに再現していますから、本物をさわっているのと変わりません。


タッチング水槽の様子
生きている貝がいますので、水中でそっとお願いします。

実は10年以上前に、神奈川県内のイシガイ類の生息状況を仲間と調べて回ったことがあります。結果から言いますと、相模川での貝の生息状況はあまり良いとは言えません。見つけることができたのは3種類だけで、生息場所も数もごく限られていました。本や論文では4~5種類いることになっていますから、おそらく昭和中ごろまでの「相模っ子」たちには身近な存在だったのかなと想像しています。現代の皆さまには、せめて当館で触って、絶妙な手触りのとりこになってもらえたらと思いました。そしてあわよくば、これをきっかけにイシガイ類を好きになって、もっと知りたい!守りたい、と思ってくれたら最高です。

ということで、ザリガニや魚のような動きはありませんが、なかなか出来ないタッチ体験だと思いますので、是非お試し下さい(アメリカザリガニのタッチングは昨年をもちまして終了しています)。

伊藤


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