飼育日誌

2023.04.15

ヒライソガニ七変化

皆さまこんにちは。
数日前に、相模のカニたちを再展示したとお伝えしました。
カニたちに気持ちよく過ごしてもらうことを考えて、皆さまに彼らを「探してもらう」ことをお願いしました。
特に「小川の実験観察テーブル」の方は、全ての展示種を「探して・見分ける」難易度を上げ過ぎてしまいました。ということで、ヒントを出さねばと思い立ちました。

ズバリ、難易度をはね上げているのは、ヒライソガニです。
海の岩場ならよく見かける普通種ですが、相模川では珍種です。
「そりゃ、川だし、塩分が低いからでしょ?」
一概にそうとも言えないのです。
例えば、ヒライソガニがたくさんいる江の島の北西岸。境川の影響で塩分が常に低く、時に海水の1/3にまで下がります。一方で相模川。満潮時には川の中にある須賀港(旧港)で塩分がほぼ海水と同じになることもあります。
ヒライソガニの生息に塩分が必要なことは確かですが、それ以上に彼らのくらしやすさを左右する条件があるのでは?と思っています。いやぁ奥深いです。

お話を戻します。
彼らの見分けが難しい理由、それは模様の多彩さです。
先日、江の島に行って、様々な模様のヒライソガニを観察してきたので紹介します。


その1、紫色です。江の島ではこのタイプが一番多い気がします。展示解説のイラストも、これをモデルにしています。


その2、茶色です。場所によっては一番多いタイプではないでしょうか。多くの図鑑ではこれを元に紹介していますね。


その3、ホワイト!いわゆるパンダタイプで、磯遊びで最も人気があるカニといってもいいでしょう。いやぁ美しいです!


その4、大理石模様です。これもなかなか美しいです。まだ続きます!


その5、ピンク大理石?これもすごい!パンダタイプに負けず劣らずの美しさです。


その6、まだら模様。他の種と見分ける時に一番やっかいなタイプです。この模様は、ケフサイソガニなど他のイソガニ類にも見られるからです。

もう!こんなのどうやって見分ければいいんだ!と思いましたね。
大丈夫です。
まずは甲らの「盛り上がり」をチェック。ヒライソガニではその名の通り、ほぼ平らでスベスベです。海ならほぼこれで大丈夫です。
ただし、相模川には同じような甲らを持つ、ヒライソモドキの仲間がいます。ヒライソモドキの仲間とは、オスではハサミに毛があるので見分けられますが、メスにはありません。
〇〇ヒライソモドキのメスと、ヒライソガニ。これをどう見分けるか…。
絶対ではない、フワッとした見分け方なのですが、そんな時に私は、ハサミの模様を見ます。


オレンジから茶色のハサミに黄色いツブツブ模様。
多くのヒライソガニはこの感じなのです。


このように、ハサミの模様すら分かりにくいタイプもいるのですが、研究目的でなければ、このように見分けてもよいのではと思っています。

ということで、お時間がございますカニ好きの方は「小川の実験観察テーブル」でじっくり観察してみて下さい。見慣れると、全体の雰囲気でカニの種類がだいたい分かるようになってきて、私のように海水浴中に家族そっちのけでカニに目で追ってしまうようになるでしょう。

伊藤


2024年12月
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