飼育日誌

2023.04.01

尺イワナの上を行く!

皆さまこんにちは。
特別企画展「ちっちゃな生き物展」が先日ついにオープン致しました。
それとほぼ同時期に、ちょっとだけリニューアルして再開した水槽があります。人ゾーンの「水上散歩水槽」です。


再開した水上散歩水槽

新展示としてオープンして丸3年。痛んだ部分などが目立ってきたので、展示をクローズして本格的にメンテナンスすることにしたのです。


作業の様子。天板を外して落水して…


プロの職人さんにシリコンシール頂きました。美しい職人技!

せっかくなので、メンテナンスに合わせて、展示をニッコウイワナに更新しました。
「魚の上を歩きながら観察できる」体験学習に、「源流域」と「人との関わり」というコンセプトの融合に丁度よい展示生物はいないものかと、担当者である竹本飼育員と知恵を絞りました。

いくつか出た案のなかで、まずはイワナを試してみることにしたのです。
試す、と書きましたのは、飼育面でちょっとだけ工夫が必要かなと思うからです。
1つは水温。イワナの適温は15℃です。寒い今はまだ大丈夫ですが、夏に向かうにつれて、水温を低く保てなくなったり、ガラスが結露して滑りやすくなってしまうかもしれません。
もう一つは魚の状態。本来警戒心が強い魚です。その点を踏まえ、展示へは当館で数年間飼育して人慣れした個体をお引越しさせることにしてみました。
30㎝を超える「尺イワナ」は、釣り人の憧れの的です。それをはるかに超える巨大イワナを、上から間近でご覧頂けます。
短期間の「お試し」となる可能性がありますので、どうぞお早めに!


上から見るとこんな感じ

さて、ここからはマニアックなイワナトークです。
本州のイワナは、世界中のイワナの仲間で最も南に分布する種で、地域によって様々な亜種や型に進化してきた日本を代表する淡水魚です。
一方で、近年は釣りを目的として、日本各地で盛んに放流されている移入魚でもあります。
相模川で見られるニッコウイワナも、ほとんどが放流された移入個体とその子孫だと考えられています。では、もともと相模川にはイワナがいたのでしょうか?いたとしたら何イワナだったのでしょうか?
本州のイワナは大きく4つの亜種に分けられており、太平洋側はちょうど真ん中あたりでニッコウイワナとヤマトイワナの分布が分かれるエリアだとされています。


こちらがニッコウイワナで…


こちらがヤマトイワナ

ただ、正確な分かれ目がどこなのかは、専門家によって意見が分かれており、文献によっては相模川にヤマトイワナがいたと書かれていたりします。これはもう、聞くしかない!ということで、本格的な放流が始まる前を知る、懇意の専門家であるM先生とSさんに聞いてみました。
Sさんが若かりし頃、1970年代の相模川でニッコウイワナを確認しているとのこと。100%とは言えないものの、まずまず野生の個体だったろうとのご見解でした。
さらにニッコウイワナは相模川から一つ西側を流れる富士川の東側(左岸側)の支流にもいて、西側(右岸側)の支流にはヤマトイワナがいた、というのです。
私の調べでも、富士川を両亜種の分かれ目だと書いている図鑑や論文が複数ありました。
これはなかなか、もっともらしいです。相模川の在来イワナはニッコウイワナの可能性あり、です。

…放流個体が混ざってしまった現在では、確かめようがありませんが、私には納得度が高くすっきりしたのでした。他の意見もあっていいと思います。こうやってあれこれ想像するも、楽しいのです。

伊藤


2024年5月
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