飼育日誌

2023.02.25

相模のカニ展⑧ トゲアシヒライソガニモドキ

皆さまこんにちは。
特別企画展「相模のカニ展」も残すところ1週間ほどです。
そう言えば、お伝えしようと思って忘れていたことがありました。
パート④で紹介した大きな流木のことです。

たくさんのカニが身を寄せていたこの流木。
ここから、ハシリイワガニモドキの他にも2種類の珍ガニが見つかったのです。
そのうち1つが、今回紹介するトゲアシヒライソガニモドキです。


トゲアシヒライソガニモドキ(前から)


トゲアシヒライソガニモドキ(背中から)

何とも長くて分かり難い名前ですね。
体形や色合いはイソガニとハシリイワガニモドキの中間みたいな感じを受けますが、本種の最大の特徴は、水に入れるとより分かりやすいです。


水中のトゲアシヒライソガニモドキ

8本全ての歩く足(歩脚)に、ブラシのような毛がわっさりと生えているのです。
そして、矢印のところをよく見ると、トゲがあり、これが名前の由来となっています。
ハサミには毛がありません。モクズガニの逆パターンですね。
しっかりと観察すれば、見間違えることがない特徴です。

本種はどちらかといえば南国のカニですが、関東でも少ないながら見つかっています。
相模川では2015年に、内水面試験場の調査で初めて確認されました。
調査していた方はその特徴的過ぎるビジュアルから「すね毛ガニ」なんて呼んだそうです。

私が初めてこのカニと出会ったのは2017年の秋です。
南伊豆の小さな川の河口で、鉄筋にびっしりと付いたカキのすき間に、小さなカニがたくさん潜んでいました。
いつものケフサイソガニだろう、と思いながら観察すると、本種の特徴である脚のトゲがしっかりと確認できたのです。
その後の数年間はなかなか出会えなかったのですが、2020年の冬に、相模川より約10㎞東を流れる境川(大昔の相模川でもあります)で、やはりカキのすき間から幼体を1匹だけ、見つけることが出来ました。

そして今回です。例の流木を崩しながらすき間を調べていたら、珍種であるはずのこのカニが、何匹も出てきたというわけです。
本種やハシリイワガニモドキにとって、流木やカキのすき間は、とても居心地の良い場所なのでしょう。石の下と何が違うのか、カニのみぞ知るところです。


展示の右側のケースにいます。

展示するにあたっては、すき間に潜みっぱなしでは観察することができませんので、太い枝につかまって過ごしてもらうことにしました。
やはり、裏へ裏へと隠れようとしますが、餌もよく食べ元気に過ごしてくれています。
当館にお越しの際は、是非ご覧になって下さい。

伊藤


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