飼育日誌

2023.02.12

相模のカニ展⑦ アミメノコギリガザミ

皆さまこんにちは。
今回は、特別企画展「相模のカニ展」でタカアシガニと並んで異彩を放つ、アミメノコギリガザミについて深掘っていきます。


展示中の江の島産アミメノコギリガザミ

この迫力ある姿を見てください!禍々しさすら感じます。
南方系の巨大ワタリガニであり、最大級のものでは甲らの幅が25㎝以上、重さが2kgにもなります。
沖縄県ではマングローブガニ、お隣の静岡県ではドウマンガニの名で食用として流通します。
その一方、神奈川県ではほとんど漁獲されず、公式な記録は数えるほどしかありません。その産地の一つが、我らが相模川なのです。
そのあたりを、何年か前に研究したことがあります。気になる方はカニと私の名前でググってみて下さい(ちなみにここに載せた写真の多くは、当時、研究のきっかけとなった境川産の個体です)。


研究用に飼育していた境川産アミメノコギリガザミ

今回展示したカニは、江の島産です。現地の漁師さんがご自身の食用にキープしていたものを、おねだりして、ご厚意でゆずって頂いたのです。本当にありがたいことです。相模川産の幼体の標本展示もあります。

ところで、展示解説では「相模川最大最強のカニ」とうたっています。
「最大」という点については、カニ全体で見ればタカアシガニに遠く及ばないわけですが、ワタリガニの仲間では最大です。
「最強」という点については、異論もあることでしょう。
何をもって「強い」のか、という感じですよね。
あくまで私の意見として書きますと、
まずはさむ力、いわゆる握力です。そのパワーなんと800kg、瞬間的には1tを超えるとも言われます。ピンとこない方もいるかも知れないので、他の力自慢を例に挙げます。かむ力の強さで有名なスッポンが約20kg(意外と弱い?)で、アカウミガメが200kg(あのワニガメと同等)です。「かまれたら指がなくなるぞ!」と言われます。それの4倍のパワー…なんとも恐ろしい話です。
いくら力が強くてもねぇ、と思うかもしれませんが、ノコギリガザミは技にも長けています。怒り狂うとハサミのリーチをめいっぱいに使い、目にも止まらぬ速さで繰り出すのです。
以前沖縄で本種と出会ったときに、アルミ製のタモ網の柄をはさませてみたことがあります。いとも簡単にべっこりつぶされてしまいました。
…ということで、展示に移動させるときは、ベントスの扱いに定評のある西田飼育員に、気を抜かずに扱ってもらいました。


見るからにヤバそうなハサミ


大迫力の威嚇ポーズ

水槽の中ではおとなしくたたずんでいることが多いのですが、餌や掃除で手を入れる時も要注意です。水槽の真ん中にいると、端までハサミが届きます。楽しい展示で大事故になったら大変ですからね…。

「相模のカニ展示」も残すところあと約3週間となりました。まだの方は是非お越しください。お待ちしております。

伊藤


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