飼育日誌

2023.01.15

相模のカニ展⑤ オオヒライソガニの仲間

皆さまこんにちは。
冬休みが終わってしまいましたが、特別企画展「相模のカニ展」はまだまだ続きます。


オオヒライソガニの仲間

今回ピックアップするのはオオヒライソガニの仲間です。
その名前から、大きなイソガニを連想させますが、その姿はむしろモクズガニに似ています。相模川で見られるカニの中ではモクズガニに次ぐ大型種です。
全ての歩脚の先がボートのオールの様になっていることが最大の特徴であり、よく見ると脚先そのものは細く、細かい毛がクシ状にまとまって生えています。


オール上の歩脚(矢印の部分にクシ状の毛が生えています)

実際にこの足を使って、上手に泳ぎます。
他の多くの「川のカニ」が赤ちゃんの時だけ海や河口の水中で過ごし、成長すると岸辺に戻ってくるのに対して、オオヒライソガニの仲間は海中でくらし続ける場合があるようです。海で彼らが見つかるのは、やや沖合いの水面で、浮かぶ流れ藻や流木などにくっついているのです。泳ぎの上手さをいかし、浮遊物と一緒にプカプカと大海原を旅しているのでは?と考えています。

相模川で目にすることは少なく、調査などで見つかると注目の的となります。一方で、神奈川県の西部にある川では、比較的よく目にします。川によってはモクズガニより多いくらいです。

モクズガニのように食用として注目されることもないため、知名度が低い「知る人ぞ知るカニ」となっています。今回、大きな個体を入手することができ、皆さまにお見せできて嬉しいです。浮かべた木に逆さまになってつかまっている様子が面白いので、是非ご覧ください。


お腹(矢印のところを開けると突起があります。)

ところで、わざわざオオヒライソガニ「の仲間」と書いていて、気になった方もおられるかも知れません。実はタイワンオオヒライソガニという、オオヒライソガニのそっくりさんがいまして、相模湾に注ぐ川ではどちらも見つかっているのです。これらを見分けるには、オスのはかま(腹部)の内側の突起の形を、虫眼鏡で見比べる必要があるのです。生きている状態でしっかり区別するのは難しいので、今回は「仲間」として展示させて頂きました。

伊藤


2024年11月
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