飼育日誌
相模のカニ展③ チゴガニ
皆さまこんにちは。
特別企画展「相模のカニ展」お楽しみ頂けてますでしょうか。
今回はチゴガニについてです。
干潟のカニの代名詞のようなカニですが、今の相模川では見ることができません(私が見つけていないだけかも知れませんが…)。古い記録を調べていくと、1970年代までは、確かにいたみたいです。ということで、展示したいと思い立ち、関東某所のチゴガニ生息地を訪れました。
12月ともなると、大潮の日でも昼間はあまり水がひかなくなります。
この日はなんとか50㎝くらいはひいており、少しだけ干潟の泥が顔を出していました。1時間もすればまた水没します。
泥の表面を見てみると、くっきりとした穴が。
水がひいて1~2時間しかたっていないのにコレ、ということは、まだ活動しているようです。天気が良かったですからね。
私の接近を感じて、隠れてしまったようです。さて…
とりあえず手をズボリと。
やわらか過ぎず、かた過ぎない、いい泥です。この感じの泥は、確かに今の相模川にほとんどないですね。
ちょっと失礼して持ち上げて…
泥をこねくり探っていくと、もぞもぞと動くものが。
カニっぽいです。水できれいにすすいでみると…
やっぱりチゴガニでした。小さくてカワイイ!
この姿を是非皆さまにも見て頂きたくて、少しだけ持ち帰りました。
水槽の仕組み作りに長けた竹本飼育員による、自然さながらの干潟を模した水槽で展示しています。夜間「滿潮」状態で休ませて、日中「干潮」状態で活動してもらっています。上手に飼育しながら、泥地で活動する様子を観察して頂けたらと思っています。
かつての相模川には、下流域から河口にかけてドロドロの平たい干潟があったそうで、チゴガニをはじめとする干潟棲スナガニ類(スナガニ上科のカニ類)が多く生息していたそうです。それらがいなくなった今の相模川を指して「失われた干潟」の代表として扱うケースもあります。確かにそういう見方が自然ではありますが、一概にそうとも言えないこともあると、調べるなかで実感しています。
例えば、今も相模川の河口は砂地がほとんどですが、少し泥をかぶった砂地や、土のガケが崩れた下に泥っぽい場所が出来ていたりします。そうした環境でもすめるスナガニやコメツキガニは少ないながらも見られるようになっていますし、前回紹介したアリアケモドキは相変わらず広い範囲で見られます。もう少し泥の場所がふえたら、またチゴガニがすみはじめるのではと期待しています。私が生きている間に見られたら嬉しいな、などと思っています。
伊藤