飼育日誌

2022.11.01

川のヤドカリ

皆さまこんにちは。

11月1日から、当館中ほどの「ミニ企画展示」を新しくしました。
カニの次はヤドカリです。

題して「古相模川・境川河口にすむヤドカリ」です。我ながらちょっと(かなり?)変わった切り口です。

境川は相模川の東側を流れる川で、その河口はちょうど江の島の北西岸に注いでいます。実はこの川、約7万年前は相模川そのものだったことが分かっています。江の島のガケの地層から相模川と同じ砂利が出てくるのが証拠となっています。ちなみにその頃は氷河期という今よりずっと寒い時代だったことも分かっています。寒いと、海から蒸発した水が雪になり、陸上に積もったままになります。そのぶん海の水が減って、何と今より100m以上も海面が低かったそうです。想像するとすごいです。

と言うことで、境川は相模川の双子の兄弟みたいな川です。今回はその河口、江の島の北西岸にすむヤドカリを3種類チョイスしました。


こちら、ユビナガホンヤドカリです。今回の主役です。
ヤドカリとしては河口やそのまわりにできる干潟に多く見られる種です。
しましま柄がとってもおしゃれです。


お次はホンヤドカリです。磯遊びの定番中の定番キャラです。実は塩分をそれほど気にしない種で、河口にもたくさんいます。


続いてコブヨコバサミです。これも河口を好む種ですが、境川では他2種ほど多くありません。今回はわき役扱いで少しだけ展示しました。パステルオレンジの足が良く目立つので、見つけやすいと思います。

これらを「なんともヤドカリらしくない」レイアウトで展示してみました。境川河口、すなわち江の島の北西岸は、川から落ち葉などが大量に流れてきてたまっています。上から見ると海っぽいのに、水中は川っぽい、みたいな不思議な雰囲気が出せたでしょうか。


流木をよじのぼるヤドカリ。きっと河口のヤドカリの多くが、こんな感じで立体活動しながら、木の皮や落ち葉なども食べたりしながら過ごしていることでしょう。一見すると違和感バリバリの光景ですが、河口で確かに繰り広げられている光景である、と思って見て頂けたら嬉しいです。

おまけにこんなのも。ヤドカリが自分から上陸しています。水中のヤドカリは陸上で活動しないイメージがありますが、野外で観察していると陸にいるものがちらほら見つかります。潮がひいたときに取り残されたか、次の満潮までじっと陸で耐えているのかな?と思ったのですが、展示水槽の水は上下させていませんから、明らかに自分から上陸しているわけです。興味深いです!
最近、とある番組で上陸して狩りをするタコが話題になりました。私たちが「水の生き物だろう」と思っていた生き物の中に、陸でも活動できる生き物が想像以上にいることが分かってきています。ヤドカリも案外そうなのかもと考えており、いつか調べてみたいなと思うこの頃です。

伊藤


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