飼育日誌
モツゴの話題
皆さまこんにちは。
もう一つ、新展示のお知らせです。
「川の多様な生き物水槽」にモツゴが再登場です。
クチボソの愛称でも知られるモツゴは、相模川では本流からはずれた流れがゆるやかな場所にすみます。
当館でも流れのアクアリウム下流に少数がわき役として展示されていましたが、今回は目立つように展示したいと思いました。
同居のヒラテテナガエビにつかまらないか注意しながら、お世話していきたいと思っています。
さて、いわゆる「雑魚(ザコ)」の代表選手でもあるモツゴですが、いろいろな謎や話題を持つ、興味深い魚なのです。ちょっとだけ紹介します。
①神奈川県での立ち位置
本種の自然分布は関東地方より西とされます。東北地方や北海道にいるモツゴは確実に移入種だと言えるのですが、なやむのは神奈川県のモツゴが在来か移入かです。関東地方の最も西にある県ですから、ふつうに考えれば在来です。一方で、ほとんどが西日本から移入された子孫だとされるむきもあります。そこで、展示解説では在来種であり移入種でもある、という表記をすることにしました(このあたりは、オイカワやアユにも言えそうですね)。
②移入種としてのモツゴの影響
他の魚の卵を食べてしまったり、意外とケンカっ早くて他の魚を追い払ってしまうとかいろいろあるのですが、一番やっかいなのが、絶滅危惧種のシナイモツゴと結ばれて、雑種を作ってしまうことだと言われています。雑種は繁殖できないうえ、シナイモツゴの雌がモツゴの雄を選びがちなため、最終的にモツゴ同士の子孫だけが残るといいます。神奈川県のモツゴっぽい魚は、昔はシナイモツゴだったのではないか、と大胆に考える方もいます。
③移入先で守るべき?
ということで、関東より北にすむモツゴは移入種として扱うべき魚になるのですが、オオクチバスやアメリカザリガニに比べると、日本人に親しまれている感じです。
何年か前に、ある沼で魚をふやす研究している方から聞いたことがあります。オオクチバスの駆除をすすめたら、日本の魚がふえて「よし!」という話だったのですが、ふえた魚のメインがモツゴだったのです。そこでは確実に移入種です。旧知の方だったので、ざっくばらんに聞いてみたのですが「見慣れない外国の魚じゃなく日本人になじみのある姿の魚に入れ替わったのは一歩前進」という見解でした。なるほど、と思うとともに、これまで横目にスルーしがちだったモツゴにも、改めて注目しなくてはと思ったのでした。
ちょっと難しい話になってしまい、失礼しました。
伊藤