飼育日誌

2022.06.19

ウキウキ巻貝

皆さまこんにちは。

前々回の日誌で「小川の実験観察テーブル」の巻貝についてご紹介しました。
当館では巻貝の展示、前からしてはいたのです…わき役として。
カワニナやモノアラガイ類がタナゴ水槽や流れのアクアリウム中流のコケとり役として多数いますし、ふれあいワゴンにカタツムリ(ミスジマイマイ)が登場することもあります。

面白くかわいい巻貝ですが、動きがない(のろすぎて止まって見える?)ためか注目されにくいキャラでもあります。
そんな彼らが「泳ぐ」と聞いて、信じられますか?

まずはスクミリンゴガイ
予備水槽にて。浮く餌をパラパラしたとたんにこれです。

わかります?


別角度から

水面に足(お肉の部分)で逆さまにはり付いて、自在に方向転換しながらすすむのです。
小さなモノアラガイの仲間がこの秘技を使うことはまあまあ有名ですが、最大で8㎝にもなる本種がやっているのを初めて見たときは驚きました。
突然自分から沈んだり、ふわーっと流されていったりもします。
さらに、卵から生まれたばかりの赤ちゃんは、親貝よりも「よく泳ぐ」ことを確認しています。これ、要注意です。
と言いますのも、田んぼなどで本種を駆除するときに、卵を水中に削り落とすことがあるからです。


野外で撮影した卵

確かに卵は水に入れるとダメになるのですが、生まれる直前の赤ちゃんはうってかわって泳ぎ上手なわけですので、これらの新天地への移入を手助けしてしまいかねません。

さて、巻貝で「泳げる」のは一部の種に限られ、タニシやカワニナはできないと思っていたのですが、つい先日…。

両生類水槽のカワニナが…

どこかで見たぞ、この動き!


さらにタニシの赤ちゃんも(お前もか!)

見つけてしまいましたね。
リンゴガイやモノアラガイほどしょっちゅうは見られず、タニシでは生まれた直後の赤ちゃんでしか見たことがありませんが、お馴染みの2種も、その気になれば「泳げる」のです。以前に別のところで書いたことがあるのですが、巻貝たちのこの「泳ぎ」、単なる珍行動ではないと思っています。

驚愕! 泳ぐリンゴガイ|新江ノ島水族館|2019年7月7日のえのすいトリーター日誌

実は数年前に、このことを論文にしようと思ったのですが、審査員の先生から「そんなのとっくに知られているぞ」と言われて却下されてしまったのでした。
専門家からしたら確かにそうで、私の勉強不足に反省しきりでしたが、一般の図鑑や生き物の番組でこのこと(巻貝が泳ぐこと)がほとんど紹介されず、知る機会があまりないよな~とも思ったのでした。

ということで、生き物の珍行動、これからも注目しながら、広くお知らせしていこうと思います。

伊藤


2024年10月
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