飼育日誌

2022.06.05

タニシとリンゴガイ

皆さま、こんにちは。

5月31日より館内右奥の「小川の実験観察テーブル」で新しい展示が始まっています。
地味さ、ここに極まれり、淡水巻貝です。

チョイスしたのは神奈川県に生息する2つの巻貝
・タニシ(おそらく多くがヒメタニシ)
・スクミリンゴガイ
です。

現地にて(右がタニシ、左2つがリンゴガイ)

昔から日本の田んぼでおなじみのタニシと、南米からの移入種であるリンゴガイ。
イラスト付きでそれぞれの違いを知って頂けるようにし、姿がよく似た「昔なじみの貝」と「新入りの外国の貝」を見分けてほしいと思ったのですが…

よくよく聞いたり調べてみますと、ことはそう簡単ではないようです。

ズバリ、日本のタニシが移入種である可能性が高い!です。

日本には4種類の「タニシらしいタニシ(オオタニシ、ナガタニシ、マルタニシ、ヒメタニシ)」がすんでいますが、このうち、元から日本にすんでいたのはオオタニシとナガタニシだけで、ヒメタニシはほぼ移入種、マルタニシも地域によっては移入種、という感じみたいです。

「感じみたい」というフワッとした言い方になってしまうのは、これらの移入時期が、数百年から数千年も前ということで、証拠が少ないためです。

縄文人のゴミ捨て場から見つからなかったマルタニシとヒメタニシが、それ以降の時代には見られるようになったことから、大陸からの稲作の伝来に伴ってきたり、日本の中で稲作が広がるに合わせて広がったり、タニシ自体を食べるためにはるばる連れてきた、という想像ができるそうです。

と、いうことで、展示した貝はどちらも移入種、ということになるわけです。

実は、タニシのような「大昔の移入種」にあたる生き物はたくさんいます。スズメやモンシロチョウ、エノコログサ(ねこじゃらし)などです。
移入種の図鑑などを見ても、これらを扱っていることは少ないので、知らない方が多いのではないかと思います。
私自身、スズメやねこじゃらしを見て「あっ!移入種だ、何とかしなきゃ」と考えることはほとんどありません。でも、移入種であることは知っておきたいと思います。

とまあ、移入種については大学生の時に真面目に関わって以来、あれこれ考え続けているのですが、分かりやすい言葉で、あらゆる人に分かって頂けるよう伝えるのが難しいと、今回の展示を作っていても思いました。

当館としては、妥当性の高い(いくつかの研究などで状況証拠が見つかっているなど)情報を、本物の生き物とともに分かりやすくお伝えできたらと思っています。

伊藤


2024年12月
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