飼育日誌
メダカの海水浴
皆さんこんにちは。
春の特別企画展「メダカ展」もそろそろ折り返し。お楽しみ頂いておりますでしょうか。
サラシンメダカの話題に引き続き、
日本のメダカの“すごい能力”を紹介します。
海水魚のカクレクマノミとメダカが一緒に泳ぐ水槽があります。
そう、しょっぱい海水でメダカが生きているのです。
これってすごいことだと思いませんか。
海や川にいる魚たちは、そこの水の「塩の濃さ」に合わせて体調を整えています。
例えば、川魚をいきなり塩水に入れると、多くの場合、体調を塩水に整えなおすのが間に合わず、弱ってしまいます。
メダカの場合、この「整える能力」がとても優れており、数日もあれば、海水になれてしまいます。これは自然状態で海と川を行き来するウグイやサケの仲間に勝ります。今の当館でメダカ並みにこの能力が高いのはゴクラクハゼくらいです。
能力としてすごいこともそうですが、これが自然下でどう役立っているのか、とても興味があります。
例えば大雨の後などに、川が増水して海近くまで流されてしまったとしても、生き残れるはずです。
海や、塩のうすい河口に流されたら、そのまま居ついたり、ふらふら泳いでいって隣の川に戻ってしまうということが、他の淡水魚より起こりやすそうだな、と思うのです。
でも、実際はそうでもないみたいです。
メダカは地域によってちょっとずつ違うことが、遺伝子の研究で分かってきています。神奈川県で言えば、相模川産と酒匂川産、三浦半島産ですら「ちょっと違う」のです。
つまり、海を通っての交流はほぼなかったと想像されるわけです。
泳ぐ力が弱いので、波に逆らえないとか、海の魚に食べられてしまうのでしょうか。
改めて“海水魚”として観察してみると、ヒレのつき方やたたずまいが、なるほど超ミニチュアのサンマっぽいな、なんて感じるのは私だけでしょうか。
日本のメダカ、まだまだ謎の多い、不思議な魚です。
伊藤