飼育日誌

2021.09.09

タガメの赤ちゃんのその後

こんにちは。
6月に投稿したタガメの赤ちゃんの記事を覚えていますか?
もう9月に入り夏が終わろうという時期ですが、赤ちゃんたちはどうなったでしょうか。
今回はタガメの赤ちゃんたちの成長過程をお見せしようと思います!


こちらは生まれたばかりの1齢幼虫です。体長は13mmといったところでしょうか。
体が緑色をしており、はっきりとした縞模様があるのが特徴です。
タガメの幼虫は、卵から孵ったすぐが1齢、そして成長して脱皮をするごとに2齢→3齢→4齢→5齢幼虫と呼ばれます。
そして5齢幼虫が脱皮をするとついに成虫となります。つまり、生まれてから5回脱皮をすると成虫になるわけです。


こちらが2齢幼虫です。(反対向きの写真ですみません…)
体長17mmほどになりました。はっきりとした縞模様はなくなりましたが、変わらず緑色が強く出ています。
タガメの最大の特徴ともいえる大きな前脚ですが、1齢から2齢で急にたくましくなる印象を受けます。
この時からもうハンターとして十分な能力を持っていて、エサ用のメダカをびっくりするほどの勢いで平らげていきます。


3齢幼虫になりました。体長は25mmほどです。
縞模様はさらに薄くなり、緑色もどんどん薄くなっています。
ただ実際に見てみると、見た目の感じはほとんど2齢幼虫をそのまま大きくしたような印象です。
毎日のように世話をしていた私ですが、休日明けに見ると2齢か3齢かよくわからなくなることもありました(笑)。


こちらが4齢幼虫です。体長は33mm、ついに3cmを超えました。
大きな前脚もより立派になり、実際の迫力は3cmよりもはるかに大きくに感じます。
4齢にもなると後脚の遊泳毛(泳ぐための毛)が目立つようになります。
タガメは水生カメムシの中では泳ぐのが上手で、この遊泳毛の発達した後ろ足を漕いで泳ぎます。


さて、ついに幼虫の最後である5齢幼虫となりました!体長は一気に50mmほどになり、体色も成虫に近い薄い茶色です。
昆虫が成虫になることを羽化といいますが、タガメも幼虫までは翅(羽)を持たず、成虫になると翅が出来上がります。
しかし、幼虫のころは全くないかというとそうでもなく、翅の原型(翅芽)が幼虫期でも見て取れます(赤丸部)。
この5齢幼虫の期間が一番長く、成虫になるまで2週間近くかかります。
あと一回の脱皮で成虫だ!というワクワクも相まって、一番待ち遠しい時間です(笑)。


待ちに待った成虫です!体長は60mmを超えています!やはり国内最大級の水生昆虫なだけあり、成虫の迫力は段違いです!
ちなみにこの個体はメスで、タガメはオスよりもメスの方が体が大きくなります。
タガメは水田において鳥と並ぶ高次捕食者で、魚だけでなくヘビやカメなどの爬虫類を捕食した記録もあります。
実際に飼育していても、幼虫の段階で自分よりも体の大きい魚を捕食するなど、そのハンターぶりを遺憾なく発揮していました。
また40匹ほどの幼虫を成虫にするために、毎日100匹ほどの金魚やメダカを与える必要があり、
自然界でタガメが育つためには生き物に溢れた豊かな環境が必要であることを伺わせます。


最後になりましたが、幼虫の飼育環境のご紹介です。これは5齢幼虫が脱皮して成虫になった時の写真です。
左上に脱皮殻がありますね。
写真の飼育方法は、個別飼育と呼ばれるもので、タガメなど幼虫期の共食いが頻発する水生昆虫に適した飼育方法です。
1齢、2齢…と齢期が上がるごとに水深や容器の大きさを変えながら管理します。
あとは足場となる水草をいれて、毎日の水換えと給餌をするだけです。

……と書くとすごく簡単なんですが、実際にやってみるとこの管理は非常に手間がかかります(笑)。
先にも言いましたが、エサもたくさん食べるので水換えの手間やエサ代も馬鹿にはなりません。
1、2齢あたりまでは、大きな容器でたくさん飼育する多頭飼育のほうが良いかと思います。
タガメの繁殖は計画的に意欲をもって取り組まねばなりませんね。

今年度当館で成虫になったタガメは28個体です。来年度も繁殖させられるように頑張って飼育していきます!
皆さんにこの新成虫たちをお披露目できる日を心待ちにしております。
臨時休館が明けた際には、ぜひ水生昆虫水槽まで!!

山田


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