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飼育日誌
2019.06.25相模川ふれあい科学館 アクアリウムさがみはら

ミヤコタナゴの人工産卵床

タナゴの仲間は、生きている淡水性二枚貝の中に産卵するという特殊な生態を持ちます。
そのため、産卵準備の整った雌のタナゴは、貝の中に卵を産み付けるための産卵管と呼ばれる管を伸ばし、
貝の出水管にその管を差し込んで卵を産み付けます。

そして雄のタナゴは、入水管付近に放精し、貝が水を取り込むのと一緒に精子が貝の中に運ばれ、
貝の中で受精が完了するという、実に良くできた産卵様式を示します。

飼育下でタナゴの仲間を繁殖させるには主に2つの方法がとられています。

1つは、二枚貝に産卵をさせて、自然に繁殖させる方法(自然繁殖)。もう1つは、人為的に腹部を圧迫して、
採卵・採精して、人工授精させる方法(人工繁殖)。

本来であれば、二枚貝を用いて自然繁殖を実施するのが一番良いと思いますが、二枚貝の飼育は難しく、
長期飼育するこが困難であり、また現在、淡水性二枚貝の多くが絶滅危惧種として指定されているほど、
自然界で数が減ってしまっているのです。

そのためタナゴの繁殖だけに二枚貝を使っていくのにも限界があると思います。

そして人工繁殖では、繁殖できる種もありますが、中には上手くいかない種があったり、
人為的な選択により親魚が選ばれたりするなど、問題点もいくつかあります。

また水族館などでは、展示水槽で繁殖できそうな個体がいても、人工繁殖を行うために、
その個体だけをその都度取り上げるのが困難だという問題もあります。

そのため、展示水槽では、見せることを中心に、そして繁殖活動の多くがバックヤードなど
予備の水槽で行われています。

そこで、二枚貝の使用に配慮し、且つ自然産卵により、受精卵を得られないものか、
更には展示水槽で繁殖させるにためにはどうしたらよいかを考えました。

そして、これらを解決するために人工産卵床装置なるものを作製してみました。

過去にもいくつか研究例はありますが、今回は展示水槽でも使えるよう作製を試みました。

簡単に言いますと、プラスチック容器を用いて二枚貝のように出水管、入水管を作り、
水の流れがつけられるよう再現しました。

また過去の論文などで、貝の匂いや物質が産卵行動を誘起することが示されており、
今回も貝を1つ容器に収容して、水流に貝の匂いなどが出るように工夫してあります。

予備水槽の実験でのテストを経て、システムの問題点も見つかりました。
そのような問題点を解決し、いよいよ今年、ミヤコタナゴの展示水槽で公開実験として、
人工産卵床装置を設置しました。

装置のスイッチを入れると、もう直ぐに雄が近寄ってきて縄張り行動を示し、
雌も盛んに水の出口をのぞき込む行動が見られました。



そして数日後には、産卵を確認しました。

それからも毎日ではありませんが、卵が産み付けられており、
その卵を取り上げてバックヤードで飼育していると2日後には孵化を確認することが出来ました。

孵化を確認出来たということは、産卵、放精、受精と、一連の繁殖行動がこの装置の中で完結したことを示し、
淡水性二枚貝以外で繁殖に成功出来ました。

まだまだ受精率が低いことや、全く二枚貝を使用していない訳ではないなど問題点は多くあります。

しかし何より、展示水槽で、繁殖行動から産卵まで、展示しながら実施できたことに意味があるかと思っています。

雄の縄張り行動や雌ののぞき込むような行動など、見ていて飽きません。

まだしばらくは展示水槽に設置してデータを集めようと思いますので、小さな手作り装置ですが、
大きな可能性も秘めていると思います。是非ともこの機会にご覧いただけばと思います!!!

波多野