飼育日誌

お知らせ 2024.12.27

気まぐれな旅人?オショロコマ

皆さまこんにちは。
もうすぐ今年も終わりですね。
特別企画展「渓流展~川がはじまるところ~」冬休みも張り切って開催中です。
今回はイワナの仲間、オショロコマをご紹介します。


オショロコマの展示


オショロコマ

日本では北海道だけに分布する小さなイワナ類として知られています。
小さい体に美しい霜降り模様、イワナ類らしい勇ましい顔つきと、ヤマメやニジマスとはまた違った渓流魚の魅力がつまっています。
こちらもあまり見られる機会はないと思いますので、この機会に是非ご覧下さい。

オショロコマの分類や分布については、世界中でいくつもの説が主張されています。
このあたり調べ始めたらきりがなくなってきたので…代表的なものを2つだけあげてみます。

一つは、英名でドリーバーデンと呼ばれる種と同種(または亜種)とする説です。
学名はSalvelinus malma(亜種名krascheninnikovi)となり、この説だとイワナ類の中で最も広い分布範囲を持つことになり、ユーラシア大陸北東部からベーリング海峡を経て北米大陸カリフォルニアまで見られるグローバルなイワナ類となります。

もう一つは英名サウザンドリーバーデン、学名Salvelinus curilisとして完全独立種に分ける説です。この場合、朝鮮半島から樺太、千島列島あたりまでの狭い範囲に分布する固有性の高いイワナ類となります。この説が主張され出したのは2010年代と比較的最近ですね。
分類の専門家ではない私からは「2020年発行の環境省レッドリストでは上の説が採用されていますね」…とだけ書いておくことにします。ドリーバーデン奧深し、です。

全くの偶然ですが、ドリーバーデンは最近私が研究した淡水二枚貝とも関係が深い魚です。
研究の内容は、チシマドブガイという貝の赤ちゃん(魚の寄生虫)が、魚に寄生している時は濃い塩水にさらされてもへっちゃら、というものです。


チシマドブガイ


魚への寄生を経て変態完了した稚貝

このチシマドブガイ、世界中に1000種類ほどいるイシガイ類の中で、最も分布が広い種としても知られています。
西端は北海道から、ロシア北東部を経てベーリング海峡を渡り、アラスカ、カナダ南西部にまで分布しています。
…あれ?ちょっと前に、同じような分布を持つ魚の話をしたような。

ここからは想像も入ります。
ドリーバーデンはチシマドブガイの赤ちゃんにとって、相性の良い寄生相手であることが分かっています。また、ドリーバーデンの回遊は他のサケ類と比べてもアバウトで、渓流だけでなく湿地や下流域をウロウロしたり、自分の産卵と関係ない時も餌を求めて海と川を行ったり来たりすることもあるそうです。この性質は、寄生期間が数日から数週間しかないチシマドブガイの赤ちゃんにとって、海をわたって運んでもらう時にプラスに働く気がしています。
…またもやマニアックな話題になってしまいました。
次回こそは、ライトなテイストで生き物の紹介をしたいと思います。

伊藤


2025年2月
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