飼育日誌

2023.09.10

カメムシふえました

皆さまこんにちは。
特別企画展「ワンダフル!!昆虫展」も残すところあと2週間となりました。
ブースの一番出口側にある「近所の虫」の展示は、私が担当しています。
当初、開催期間中に3回ほど展示更新する予定でした。
最初はヒメギス、2回目がオオホシカメムシです。
さて、3回目はというと…


「近所の虫」展示

実は、更新するのを止めました。
「あっ!もう少しで終わるからでしょ!」と思いましたね。
ギクッとは、なりません。オオホシカメムシがバンバン繁殖しており、その様子を引き続きご覧頂きたいと思ったのです(ほんとです)。


採集したばかりの親世代オオホシカメムシ

白状しますと、このカメムシについて、あまり知識がありませんでした。
なんとなく「人面カメムシ」として認識していた程度です。
7月半ばに当館の近くにある田んぼに行った時、ふとわきにある木の上に、たくさんいるのを見つけました。
「色がきれいだし、体形はスマートでサシガメかタイコウチぽいなぁ」などと思いながら、手を伸ばすと、これが素早い!私の動きを察知して、枝の裏へ回り込んだり、地面に落ちて走り去ったりするのです。私の持つカメムシのイメージを覆すものでした(実際にはアメンボをはじめ、素早いカメムシはそこそこいます)。
気づいたら、この動きのとりこです。汗だくになってカメムシを追いかけていました。

出来れば展示したいな、と思いつつ連れ帰り、取り急ぎインターネット上で情報を調べると、アカメガシワの実(花)とカンキツ類の汁を好んで吸うらしいと分かりました。与えてみると、アカメガシワはよく吸っている様子です。いける!と展示に踏み切りました。

当初は、ちょっと飼育が難しい印象でした。ぽつぽつと死んでしまうものもいて、心配になっていたのですが、ある日、小さな赤い虫が水槽内に「わいて」いる事に気づきました。ダニではありません。なんとカメムシの幼虫(若虫)だったのです。そういえば、交尾らしき行動をとっている成虫がいました。知らぬ間に産卵に成功していたのでした。


リンゴの汁を吸う子世代の幼虫たち


育った幼虫

なんとか育てたいと思い、リンゴやら昆虫ゼリー、アカメガシワの芽など与えていると、飼育法が的を射ていたようでどんどん成長していきました。


新成虫ともう一息の幼虫


お腹も鮮やかな新成虫

9月に入りまして、子世代が新成虫になりました。
羽化したての成虫は、赤い色の面積が広くて、オレンジ色がかり、とても美しいです。
飼育を始めてここまで、ほんの1ヶ月半。ライフサイクルの短さに驚きつつ、ひと夏で興味深い飼育体験をさせてもらいました。

ところで、オオホシカメムシの展示でなかなかに手を焼いたのが、脱走です。
先ほど書いた通り、素早いです。エサの交換の時、なるべく素早く蓋を開け閉めするのですが、水槽のへりに乗られていることはしょっちゅうで、気づけば私の手首に乗られていることもありました。
さらに、ガラスの上もお手のもの。アマガエル並みの壁面活動を披露します。
最初の脱走対策として、水槽蓋の下にカエシとなる内蓋をつけたのですが、効果はいまいちでした。特に小さな幼虫は、カエシを逆さまに難なくわたり、蓋の網目をすりぬけて出てきてしまいます…。忍者もびっくりです。
現在は内蓋の下に細かいメッシュを追加して、私の開け閉め時以外に逃げられることはなくなりました。もし、水槽の外にカメムシがいたら「ああ、また飼育員さん、してやられているな」と笑って下さい。
ちなみに、臭くありませんし、刺すこともないようです(長時間手づかみした場合には分かりませんので一応注意します)。飼って良し!見て良し!の本種の魅力を知ることが出来たのが、この夏のささやかな収穫でした。

伊藤


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