飼育日誌
日本最大の川エビ
皆さまこんにちは。
本日より「川の多様な生き物水槽」に新たな仲間を加えました。
コンジンテナガエビです。
コンジンテナガエビは知る人ぞ知る淡水のエビで、日本の“川エビ”の中では最大になり、体だけでも15cm、ハサミも入れると30㎝を超えます。
南西諸島では特に川の上~中流域で見られ、それほど珍しいわけではありません。
私事ですが、10年ほど前までちょくちょく沖縄方面に生き物観察に出かけていました。
コンジンテナガエビは、探索を始めると最初に出迎えてくれる「南国らしい生き物」の一つでした。
ビジュアル面でのインパクトが大きく、出会うと満足感が大きいです。
ウキウキとしばらくバケツに入れておくのですが、採集を続けているとあまりにもよく目にするのと、他の生き物が採れると「いつでも採れるから、まぁいいかな」とリリースしてしまうわけです。
結局そのまま…関東に戻ってから、そのユニークさに気付き「採集してくれば良かったなぁ」と思わされる、そんな存在です。
さて、そんなコンジンテナガエビですが、調べてみると2014年に相模川でも見つかっているのです。
今のところ、相模川が世界で最も北にあるコンジンテナガエビの生息地(北限生息地)でもあります。すごいです。
私はまだ相模川では出会ったことがないのですが、もしかしますと「知らないうちに見て」いた可能性もあります。
というのも、相模川をはじめとする神奈川県内で記録されているコンジンテナガエビは、ほとんどが全長数cm足らずの稚エビだからです。ごくまれに育ったエビも確認されるようですが、ほとんどが関東の冬の低温に耐えられず、育つことができないのではないかと考えられます。
今回展示したものは、約半年前、昨年の秋季特別企画展で登場させた個体になります。企画展が終わってからも、バックヤードで出番を待ち続け、気が付けば2回の脱皮を経て、ぐんと大きくなっていました。
いつか相模川でも、こんなふうに大きく育ったコンジンテナガエビを見てみたいものです。
なお、南方系の生き物が関東地方で見つかることについて、気候変動などを心配する声も聞かれます。
私としては、自然のままにやってきた生き物については、マイナスのイメージを抱くことはありません。その分布拡大能力にただただ驚くばかりです。
皆さまにも是非、展示でこの雄姿をご覧頂き、相模川にこんなエビが潜んでいるかもしれないと想像して頂けたらと思います。
伊藤