飼育日誌

お知らせ 2023.10.20

相模の海の生き物展② ミズクラゲ

皆さまこんにちは。
今回の特別企画展がオープンして2週間ほど経ちました。
急な生き物の入れ替えをしたりと、オープン後も奮闘中です。
そんな中、どっしりと安定感たっぷりに、ブース中央で皆さまをお出迎えしている生き物がいます。

ミズクラゲです。


ミズクラゲの展示ブース

大きいクラゲと小さいクラゲを2つの水槽に分けてお見せしています。
水槽の間に立ってお写真を撮って頂きやすいように、ブースをかたち作ってみました。

どうやってサイズの違うクラゲをこんなにそろえたのか。
ズバリ、新江ノ島水族館にご協力を頂いたのです。
言わずと知れたクラゲ展示発祥の水族館。その中でもミズクラゲは、長年にわたって常にクラゲ展示のセンターを担ってきました。

今回、本企画展でミズクラゲを主役に選んだ理由がいくつかあります。
一番は、皆さまに本種のすばらしさを知って頂きたかったからですが、その答えだけだとありきたりなので、ここではやや(かなり?)個人的かつマニアックな理由を2つ、紹介してみます。

1つ目は、飼育員として、ミズクラゲをしっかりと展示飼育してみたかったのです。
私は19年間、飼育員をやっています。その大半をクラゲの近くで過ごしながら、一度も主担当していないのでした。それが何と言いますか、心残り?でありました。
育て方や生態など、頭では分かっていても、実際に触り、育て、見続けていた方々には叶いません。
遅ればせながらではありますが、自身が担当する特別企画展で、主役にしたい!と思ったのです。

2つ目は、川とのつながりです。実は本企画展では、海とうたいながら川と関連の深い種類をふんだんにチョイスしています。
ミズクラゲもそのひとつ。メインの生息域は海なのですが、川の中に入ることもあります。数年前まで、博物館関係者の会議で横浜にちょくちょく出かけていたのですが、街中を流れる川の中に、ミズクラゲが大量にプカプカ浮いていて圧巻だったのを覚えています。相模川ではカニを調査しているときに、浅瀬に取り残されたミズクラゲを見たことがあります。おそらく彼らは、海水が河口から水底に沿ってさかのぼる「塩水くさび」にのっかって、川に入ってくるのだと思います。また、論文や図鑑で調べてみて、うすい塩水の中でも繁殖することができると知りました。正真正銘、純淡水域でくらすマミズクラゲやヒドラとは違ったかたちで「川を利用するクラゲ」である可能性があります。
私の解釈では、ミズクラゲも「川のクラゲ」であると言ってもよいのではと思い、展示の解説にもそのあたりの思いをちょっと込めてみました。


餌(オレンジ色のプランクトン)を与えて数分後。
体のへりにある触手でとらえた餌を、体の真ん中の方へ集めていき…。


完全に体内に取り込んだところ。
餌のオレンジ色が透けて見えています。

と…いろいろ書いてみましたが、それはそれとして、深く考えずにぼんやりとながめて、癒されて頂くだけでも十分です。
私も久々によく見ると実にイイ!と感じます。そこそこ大きく、ゆったりはっきりとした動き、透明で餌の食べ方も分かりやすいと、数あるクラゲの中でもトップクラスに魅力的だと思えます。

是非「相模の海の生き物展」会場にて、舞い泳ぐミズクラゲたちに癒されて下さい。

伊藤


2023年11月
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  • 休館日
  • 祝日・振替休日
  • 9:30~17:00
  • 9:30~18:30
  • 9:30~16:30