飼育日誌
相模の海の生き物展① 海藻
皆さまこんにちは。
10月6日から、新たな特別企画展「相模の海の生き物展」がオープンです。
これを書いているのはその2日前。この2週間、飼育員一同、夜なべして準備を頑張ってきました。オープンまであと一息です。
今回はカニに続く「相模シリーズ」の第二弾として、地元の「海の生き物」にスポットを当てることにしました。
海の生き物って…範囲広すぎですね。数千、数万では収まらない種類の中から、展示に登場させられるものは限られます。
あれもお見せしたい、これもお見せしたい、とは思いながらも、通常であれば、メジャーどころの魚で席が埋まりがちです。
そんな中、ぐっと我を出し…あえてブースの一角をまるまる与えたまさかの生き物が登場です。
それは…海藻!
海における究極のわき役と言うなかれ。
冬から春の磯に出かけたならば、岩肌を埋め尽くす、まさに主役だと言えます。
半年ほど前の日誌で、江の島で見られるヒライソガニの模様のバリエーションについて紹介しました。
実はあの時「いつか展示したいな」と思いながら、海藻もチェックしていたのでした。
相模湾の海藻の盛期は早春です。
夏や秋に海へ行っても、見られる種類はごくわずかです。
あの日、観察ついでに少しだけ海藻を持ち帰って冷凍保存していました。
その後、まさかの海藻の展示が決定。
冷凍庫に眠らせていた海藻を、はやくも役立てる時が来たのです。
きれいな押し葉に仕立てて、皆さまにお見せすることにしました。
押し葉(さく葉)は、植物の標本保存法として世界的に認められた方法です。
形や色を保持しやすく、保存に場所を取らず、きちんと保存すれば何十年と持ちます。
さらに!いざとなれば水でもどして、細胞の断面などを観察できるのです。
1ヶ月ほど前に、学芸員実習に訪れていた学生さんと展示用の標本作りを行いました。
ざっくりとした作り方はこんな感じ。
こうして制作した海藻標本を、絵画のように飾りつけました。
海藻標本の下には、海藻と関わりの深い生き物たちも展示しています。
プロのデザイナーが手掛けた壁面パネルと相まって、美術館のようなオシャレ空間となりました。
‥‥展示オープンを大々的にアピールすべき初っ端に海藻の紹介とは、我ながら判官びいきかな?と思います。
でも、実はひいきではありません。
海藻が海の主役であることは事実です。
それに、当館は水族を扱う科学館(博物館)でありますから、同じ博物館である美術館的な展示も、アリだと思ったのです。
科学と芸術の融合した海藻展示、素通りせずに、是非ご覧下さい。
伊藤